日誌

09.09.ふたつの人生(校長コラム)

大学生の頃、駄菓子屋でアルバイトをしていました。通常は1〜2名体制で店舗を運営しますが、平日の夜は、たいてい1人体制でした。
私は、運営会社の社長に気に入られていて、「宮本くんがいると売上が伸びるなあ!」とよく褒められました。
実際、1日の売上が平均5万円程度のお店でしたが、私がいる日は、7万円程度売り上げていました。
もちろんこれにはカラクリがあって、美味しくて、比較的単価が高い「アーモンドおかき」という商品を多めに仕入れて、店の前を通る人たちに試食してもらい、すると、この「アーモンドおかき」は絶品であるため試食した人はたいてい購入してくれて、売上が上がります。
また、社長に了承していただいた上で、閉店時刻を繰り下げて、売り上げが7万円になるまで店を開けていたこともあります。
その頃は、アルバイトではありますが、「仕事って楽しいなあ!」って思いました。
他にも、色々な業種でのアルバイトを経験しましたが、その頃の私は、「休みの日も含めて、夜遅くまで一生懸命働いている人たち」が皆かっこいいと感じていました。

大学生の頃の私は、当然のことながら、「今は“大学生の顔”をしていて、いずれ就職したら“”仕事人の顔”になる」と考えていました。
今思うと、そのときの考え方は決して間違いではありませんが、世の中、そんな単純な仕組みではないと思います。
大人は、“仕事人の顔”(仕事での顔)のみで生きているわけではありません。

私には「3つの顔」があります。
・仕事での顔(校長)
・家庭での顔(父親)
・地域での顔(自治会、地域行事の運営)

その時々で、服装、顔つき(表情!?)が若干違うかもしれませんが、どの顔も、私そのものです。
そして、いずれも大事にしています。
仕事では、人に対して恥ずかしくない、嘘をつかない正しい行動を心がけています。
家庭では、なるべく子どもたちを関わる時間を多くもつようにしています。
地域では、全力で関わっているという状況ではありませんが、きちんと地域の活動に参画するよう心がけています。
とはいえ、仕事、家庭、地域の両立は言葉で言う程、簡単なことではありません。
正直、いつも苦戦しています。

そして、疲れたときや上手くいかないときには、「家庭や地域は無視して、仕事だけに集中したい・・・。」「仕事を休んで息子たちと関わりたい・・・。」なんて思うときがあります。たまにですが・・・。

そして、そんなときは、ある地方銀行の「ふたつの人生」というCMを思い出します。
かなり昔のCMですが、インターネットで検索してみたら、今でも見られました。

こんなCMです。
画面が左右2つに分かれていて、別々の日常が流れます。
画面左側は、仕事に全力で取り組む女性が映し出され、あるとき、自分とは違う生き方をしている、スーパーにいる親子連れを見て、あこがれというか、もどかしいような表情を見せます。
一方、画面右側は、子育てに全力で取り組む女性が映し出され、自分とは違う生き方をしている、忙しそうに仕事をしている人を見て、こちらも、あこがれというか、もどかしいような表情を見せます。

同一人物ですが「仕事に比重をおいた人生」と「家庭に比重をおいた人生」を対比できる演出です。しかし、最後は、どちらの女性も旧友と再開して、明るい表情を見せます。
今が幸せであったとしても、「隣の芝は青い」ということでしょうか。

この「2つの人生」についてですが、「どちらが幸せか?」というような話ではないと思います。
人は、「仕事」「趣味」「ボランティア活動」「地域行事」「育児」「家事」「介護」等、今の環境や年代によって「やるべきこと」が違います。複数やらなければいけない状況も少なくありません。
したがって、「仕事だけ」「家庭だけ」「遊びだけ」といったように、やるべきことを限定するのではなく、「今できること」「今やらなければいけなこと」を複数組み合わせながら、完璧にはできなかったとしても、コツコツ地道に努力する、その積み重ねが「人生」だと思います。